時は うつろぐ(後編)
彼は 決して良い体格ではなく
身長も普通でした
しかし その制服の下からは
見せかけだけではない力強い筋肉が・・
そう
私たちの暮らしを守る 消防士さんでした
消防署を訪ねた私を いやな顔一つせず
対応してくれたのです
「リングカッター」は消防署にあるのです
災害で救助する際に 様々な状況の中
リングカッターを使う場面が多いのです
私は リングカッターで切ってもらえないかと
頼みましたが
彼は 「大事な指輪なので」
と
洗剤をつかってくれたり
タコ糸をつかってくれたり
血管圧迫法を駆使してくれたり
安易に カッターを使いませんでした
それでも 指輪は私の指から取れず
こまりはてたとき
消防署の奥から
さらに2人が出てきてくれて
こうしたら ああしたら
と 救出作業に加わってくれました
その姿はまるで
映画「海猿」の救出シーンそのものでした
なんとか助けたい!
そんな 男たちの目がそこにはありました
3人の細マッチョの隊員が 私を救うために
全力でとりくんでくれました
映画なら 最後は感動の救出となるシーン
しかし
私の指の肉は 隊員たちでも勝てませんでした
皆 あきらめ
リングカッターの乾いた音が
私の結婚指輪を切り裂き
私は救われました
大事な指輪は まっぷたつになりましたが
隊員さんたちの努力が 私の心をいやしました
ありがとう 消防士の皆様
ありがとう 指輪
時は うつろぐ
サイズの大きい 指輪を 買ってもらおう
